螺旋からの脱却の方法
随分長い間、螺旋の中にいた。
ネガティブな螺旋である。
人が羨ましいなど、人に対してこうしてくれた方がいいなど、あれはああやっとけばもっと良かったなど。もっともっとあるが。
そういった螺旋の中で生きていた。
それは消えたと思ってもまたすぐに戻されてしまう螺旋の中。
気がついたら其処にいる螺旋の中。
良い映画を見た。螺旋がどっかにいってしまったとおもったが、気がつくと3時間後には螺旋の中にまた自分がいた。
いい話を聞いた。螺旋がどっかにいってしまったとおもったが、気がつくと4時間後には螺旋の中にまた自分がいた。
いい人に出会った。螺旋がどっかにいってしまったとおもったが、気がつくと半年後には螺旋の中にまた自分がいた。
でも螺旋を完全に降りた時期が来た。
その瞬間はものすごい夕日を見た時だった。
何でもない日に。
別に見ようとは思っていなかった唯の仕事帰りに。
ものすごい夕日を見た。
空も山も作物も雲も石も酸素も鳥も
全部が圧倒的なデカさを持っていた。
太刀打ちの出来ることがない、生かされているだけのちっちゃい者だと思い知らされた。
螺旋からの脱却の方法は。
そんなものは。
いずれ誰もが気付いてくれるだろう。
目に見えない微生物が足の下に蠢いてるのを感じたその時に。
想像力の範疇を超えたところにいるものが目の前にあるときに。
全て与えられていると知ったときに。
水がざわめきをおこして、
歌っているのが大きく大きく聞こえた。
その時に。